北京オリンピック開幕まで2か月を切る中、“外交的ボイコット”を表明する国が相次ぎ、中国と各国の対立が浮き彫りになっています。何が問題なのか、日本はどうするのか、詳しくみていきます。
■4か国が北京五輪“外交的ボイコット”
東京大会に続く、コロナ禍2度目のオリンピックとなる冬の北京オリンピックは来年2月4日に開会式、20日に閉会式が行われます。
来年は日中国交正常化50周年の節目になりますが、日本政府は今、難しい対応を迫られています。
それがオリンピックに政府関係者や閣僚を派遣しない“外交的ボイコット”です。選手が出場できなくなるのではなく、政府関係者などを派遣しないということです。
外交的ボイコットを表明したのは、アメリカ、オーストラリアと続き、新たにイギリス、カナダもボイコットを表明しました。
これに対して中国側はすぐに反発し、それぞれの国の中国大使館の報道官は「中国政府はイギリス政府関係者を招待していない」、「国際社会と多くの選手の反対にあうだろう」、「カナダはスポーツを政治化せず、北京オリンピックを妨害する誤った言動をただちにやめなければならない。さもなければ、自ら恥をかくだけだ」と声明を出しています。
これら4つの国がボイコットする理由は、中国の人権侵害です。アメリカ・ホワイトハウスのサキ報道官は「中国による新疆ウイグル自治区での大量虐殺や人権侵害」を理由にあげ「人権のために立ち上がるのはアメリカのDNAだ」と話しています。
一方の中国側は、大量虐殺について「世紀の嘘で事実ではない」、「嘘とデマに基づいて北京冬季五輪を妨害しようとすることは、アメリカの道義と信頼を喪失させる」と主張しています。さらに、「断固とした対抗措置をとる」と猛反発しています。
中国側の思惑について、北京で取材を続けるNNN富田徹総局長は「北京オリンピックは習近平政権の威信をかけた国家イベント。本音ではバイデン大統領を招待するなどして、華々しく盛り上げたかったはず。そのため、先月の米中首脳会談の後にアメリカが外交的ボイコットを発表したことは本当に痛手で、このままボイコットドミノが広がることを強く警戒しているとみられる」と話しています。
■日本の方針は?
日本の方針についてですが、7日、岸田総理は「オリンピックの意義とか、我が国の外交にとっての意義等を総合的に勘案し、国益の観点から自ら判断していきたい」としています。
同盟国のアメリカがボイコットするけれども、日本は日本で判断するということです。現時点でどうするかは、まだ決まっていません。
一方、中国は先月、日本を「中国は東京五輪を全面支持した。日本は信義を守るべきだ」とけん制しています。この夏の東京大会は、コロナで開催が危ぶまれていた時も「中国は全面的に支援した。その義理を返しなさいよ」ということです。
安倍元総理は9日、自身の派閥の会合で次のように発言しました。
安倍元首相
「ウイグルで起こっている人権状況については、政治的な制度、メッセージを出すことが我が国には求められているんだろう。日本の意思を示すときは近づいているのではないかと考えている」
日本の意思を示す時、つまり、日本も“外交的ボイコット”をするよう政府側に促したとみられます。また8日、自民党の高市政調会長も日本政府は“外交的ボイコット”を行うべきとの認識を示しました。
政府関係者は「アメリカから同調圧力がないわけではない。日本が動かなかったら、西側諸国からの目が厳しくなる」との声もあります。
アメリカがボイコットを表明して2日ほど経ちますが、日本がどのような決断をするか、世界も注目しています。
■政府内ではある作戦が
政府内では、良さそうな作戦があるということです。それが、室伏スポーツ庁長官を派遣する案が持ち上がっているということです。
政府関係者は「東京五輪に中国から来てくれた返礼は必要。中国から来た人と同じような立場の室伏長官の派遣でも問題ない」と話しています。
東京大会には、中国の体育総局の責任者が来ました。スポーツ庁の様なところの責任者の方です。室伏長官はスポーツ庁のトップで金メダリスト。政府関係者ではあるけど、閣僚でも政治家でもありません。そうすれば、中国には「東京大会を応援してくれてありがとう。代表として長官を派遣します」、アメリカには「閣僚などの政治家は派遣していない」とどちらにも顔が立ちます。
中国で起きている様々な人権問題は、うやむやにされることがあってはならない問題です。日本時間の9日夜、アメリカ主催で日本を含む110か国が参加する民主主義サミットが開かれ、中国を念頭にした人権問題が話し合われます。
オリンピックを舞台とした政治の駆け引きは、ますます激しくなるといえます。
(2021年12月9日放送「news every.」より)
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