「和牛のオリンピック」とも呼ばれる全国和牛能力共進会、「全共」はいよいよ開催まで1週間となりました。
和牛の改良の成果を競う全共では、当然主役は和牛ですが、「人」の技術を競う競技もあります。
それが子牛を産むメス牛の良しあしを見極める「目利き」の競技です。
この競技で鹿児島県代表となった男子高校生はどのような思いで大一番を見据えているのか、取材しました。
鹿児島県伊佐市の伊佐農林高校。
鹿児島のこれからの農林畜産業を担う若者たちが学んでいます。
その中の1人、農林技術科2年の尾口誠真さんです。
将来の進路を和牛生産に据えている尾口さんは7月、和牛の目利きの技術を競う審査競技会・高校生部門で最優秀賞を獲得し、鹿児島県代表として全共に出場することとなりました。
最優秀賞獲得時の尾口さん
「みんなの期待を裏切らないよう頑張ります。目指すのは1位ですね。全国1位!」
全共出場を決めた尾口さん。
学校の農場で日々、和牛を見極める目を研ぎ澄ましています。
尾口さん
「この牛はお尻が高くなっている。それがちょっと気になる」
「和牛の目利き」とはどのようなものなのか、尾口さんを指導する陳尾先生に聞きました。
伊佐農林高校・陳尾武志教諭
「たくさん子牛を産んでも丈夫な体を母牛が持っているのか、そういう能力を見抜く力」
健康な子牛をたくさん生むことができるメス牛。
それを見極めるための主なポイントは、背中にあたる「体上線」と、腹にあたる「体下線」が平行であることや、「体長」と呼ばれる肩からお尻までの長さと「深み」と呼ばれる背中から腹までの長さが十分にあるか、などが挙げられます。
また、直接牛に触れて太り具合や皮膚の柔らかさ、骨格を確認するなど、チェックすべき項目は多岐にわたります。
伊佐農林高校・陣尾教諭
「ろっ骨とろっ骨の間を肋間(ろっかん)という。ここは大事なロースやサシが入ったフィレが集まるところ。肋間が幅が広いと、いい肉がたくさん取りやすい。毛の柔らかさ、皮膚のゆとりは肉質にも影響してくる」
尾口さんが出場する審査競技は、それぞれの牛が持つ特徴を限られた時間の中で見つけ出し、評価する競技です。
全国からやってくるライバルと戦うにあたり、尾口さんが重視するポイントは?
伊佐農林高校・尾口さん
「バランスですかね。牛の頭に対して、体の長さや足の長さがどうなのかを見る」
伊佐市大口にある尾口さんの実家を訪ねました。
尾口さんの家は祖父の代から続く和牛生産農家です。
JAで畜産指導員も務める父の誠啓さんは息子の全共出場についてこう語ります。
父・尾口誠啓さん
「今は非農家の生徒が多い。なので一番になって当たり前かなと。息子は、小さい時から牛にかかわってきたので、人よりは、してくれないと困る」
このように息子を軽く突き放す誠啓さんですが、誠啓さん自身は高校生のころ、県の審査協議会で2位に入賞していました。
自分を超えてくれた自慢の息子に、誠啓さんは静かにエールを送ります。
父・尾口誠啓さん
「息子はテキストを見て、分からないことを聞いてくる感じなので、今まで習ったことを全共に出して、結果はどうあれ、頑張ってもらいたい。本当は日本一になってもらいたいですけど」
実家の農場では現在、母牛と子牛を40頭近く飼育しています。
将来、この和牛農場で働くことを決めている尾口さんの次目標は、農場の規模をさらに拡大し、全共を目指せる牛を育てること。
その目標を前に、今回は「目利きの部」で大舞台に臨みます。
全共鹿児島県代表 伊佐農林高校・農林技術科2年 尾口誠真さん
「県大会では5位以内に入ればいいかなと考えていたが、いい成績が取れました。全共を目指して頑張っている人たちのために、いい結果を残したいと思っています」
#鹿児島県 #伊佐市 #伊佐農林高校 #全国和牛能力共進会 #全共 ##和牛のオリンピック #目利きの部 #鹿児島 #鹿児島ニュースKTS